抜歯矯正・非抜歯について
矯正治療の際に、抜歯・非抜歯のどちらで行うか慎重に選択しなければなりません。可能な限り非抜歯で行いますが、歯がきれいに並ぶためのスペースが不足している場合は、抜歯をしてスペースを確保する必要があります。高校生以上の患者さまのほとんどが抜歯が必要な一方で、子供の頃に顎の成長をコントロールしてスペースを広げる治療を受けた方は、半数程度が非抜歯で矯正していただけています。
抜歯が必要なのに無理に非抜歯で矯正すると、歯がきれいに並ばずにガタガタになる恐れがありますので、必要な場合には抜歯を行います。
①抜歯による矯正の場合
矯正治療における抜歯の目的は、歯がきれいに並ぶスペースを確保することです。顎に対して歯が大きいと、歯と歯が重なったり後ろ側に倒れたりします。現代人は、柔らかい食べ物をよく食べる傾向にあるため、顎が十分に成長せず歯が並ぶスペースが不足しがちです。抜歯をせずに無理に矯正すると、噛み合わせに支障をきたしたり歯茎が下がったりします。
また、抜歯をすれば、上下の顎の位置が大きくズレているケースでも、外科手術をせずに歯並びを整えられる可能性があります。そのほか、口元が突出している場合は、前歯を後方へ移動させるためのスペースを確保するために抜歯をします。このように、矯正治療はどうしても抜歯が必要になるケースがあるため、歯科医師から詳しい説明を受けて、納得したうえで矯正治療を受けることが大切です。
②非抜歯による矯正
成長過程のお子さまの場合は、歯を支える歯槽骨の上部の幅を広げ、歯がきれいに並ぶスペースを作ることが可能です。広げるのはわずかですので、顔貌に影響が出る心配はありません。また、歯の表面のエナメル質を少しだけ削ってスペースを作る方法もあります。
削ったところはむし歯のリスクが高まりますが、フッ素コートを施すことでリスクを低減できます。
抜歯矯正と非抜歯矯正のメリット・デメリット
「抜歯矯正」のメリット
- 準備を整えて確実性の高い矯正治療ができる
- 口元のバランスが整う
- フェイスラインも整えられる
「抜歯矯正」のデメリット
- 健康な歯を抜く
- 歯を抜くことに対する精神的な負担
- スペースが余ると歯と歯の間にすき間ができる
「非抜歯矯正」のメリット
- 健康な歯を失わずに済む
- 歯をより多く残すことで将来的に歯を失ったときに移植を視野に入れられる
「非抜歯矯正」のデメリット
- 歯茎が下がってくる場合がある
- 矯正期間が長くなる
- 顎を広げすぎると奥歯が噛み合わなくなる恐れがある
- 前歯が突出して口コボ(出っ歯)になるケースがある
見た目だけでなく噛み合わせも考慮することが大切です
歯がきれいに並んだとしても、口元が突出したり奥歯が噛み合わなくなったりしては元も子もありません。このような事態を防ぐためにも、治療前の検査・診断を行い、適切な治療計画を立てる必要があります。歯並びだけではなく、口元と顔全体のバランス、歯並びの状態やスペースも踏まえて抜歯・非抜歯を決めることが大切です。
歯の本数が多くてしっかり噛めないよりも、歯の本数が少なくてもしっかり噛める方が好ましい状態です。矯正治療には時間と費用がかかるため、より良い選択をするためにも信頼できる歯科医師に相談することをおすすめします。